母が家を後にした。
私たちは、母のためにレンタルされていたベッドの撤収に立ち会う兄に後をお願いして、告別式が行われる会館に向かった。
昼には湯灌と納棺が行われた。
エンジェルケアでしたのに結局湯灌もするのかと落ち込んだが、全て立ち会うと決心してすぐ近くで母が清められていくのを見て
お化粧は道具を借りて自分でさせてもらった。
ファンデーションで肌
整え、チークをうすーく頬に伸ばし、肌に近い色のアイシャドウを指で乗せて、眉はグレーのパウダーでうっすらなぞり、書き足すことはしなかった。
グロスは私のものをまた使ったが、納棺師さんにティッシュオフしてもらって
できる限り素顔に近づけた。
お通夜には、私たちが想像していたより多くの方が来てくださった。
家族での付き合いのあった、私の中学時代の先輩も来てくれたし、小学時代の友達のお母さまも来てくれた。
母のために涙を流してくれる人の多さに、母も驚いたかもしれない。
今日で母の顔を肉眼で見納め。
明日帰宅したら、母がいない現実を突きつけられる。
その怖さで、上手く喋れない。