午前中
どうにもこちらの非が見当たらないような方よりクレームを受けてしまった。
事前に誰がどう説明したか分からないけど
その患者さんは
ハチャメチャなことを言い張って病院で使っていただくものをカウンターに置いてさっさと離れていった。
仕方なく
患者さんが離れている内にリーダーに対処のやり方を聞き
患者さんに再びカウンターに来ていただき
「あんたみたいなペーペーじゃダメなんだよ主任を呼べ」
と何度も言うその患者さんから保険証を借りて保険証の確認を自分で行い会計番号を出し
普通に手渡すとそのクレーマーさんは黙って立ち去った。
「クレーマーに会うと笑いそうになる」
という、ネイリストさんの意見がなんとなく解ると、今日初めて思った午前中だった。
とはいえ
全く落ち込まない訳でもなく
一体何が原因でああなったのかと、休憩中少し考えたりもした。
その、夕方。
私より若い女性の患者さんがにこやかに私の前にいらした。
そして
いつもの言葉を発しいつものように会計番号を発券…すると
「ここに通い始めて…」
話し始めた。
「病気が治るかどうかも分からないしいつまで治療が続くのかも分からなくて不安だったんですけど、いつもにこやかに応対してくださってとても励みになりました」
「今日で通院は一段落なんですが」
と、わざわざ話してくださった。
これにはクレームの時より余程驚いた。
日に1,000人以上の方がカウンターに来るとはいっても、放射線治療の方など頻繁に来られる患者さんの顔はぼんやり覚えていたりする。
その患者さんもそのひとりだった。
小さい頃から病院通いをしていて、自分がされて嫌なことはしないようにしようと決めてカウンターに立っていて
こんな風に言っていただけたのは初めてのことだった。
ただ相変わらず私の方は気の利いた台詞を思いつけず
お疲れさまでしたとか本当に良かったですとか
照れながらもぞもぞとしか伝えられず
それでもにこやかにその患者さんは
ありがとうございますと言って会計に行った。
図らずもその後別の患者さんの応対中に
じーんときて少し困った。
きっと彼女は
今日私にどう話そうか考えていたと思う。
思い切って話しかけてくれて、本当に嬉しかった。
…そうか
もしまたこういうことがあったら
その感謝を伝えよう。